魁皇関、引退。2011/07/20

 昨日、魁皇関の引退が発表になり、本日、記者会見があった。
 通産1047勝、幕内在位107。同期入門の力士が土俵を去り、後輩たちもいなくなっていくなか、がんばってがんばってがんばり抜いた、土俵人生だったと思う。
 長い間、本当にお疲れさまでした。

 子どものころ、1人で相撲をよく見ていた。20年ぐらい前に、若貴ブームで大相撲が人気になったときには、両親と一緒に相撲を見ていた。全然「通」ではないけれど、私は、ミーハーな相撲ファンだったのだ。

 その昔、好きだったのは、小錦、若貴、そして魁皇。みんな人気者なので、この4人が好きでしたた、という人は、案外多いかもしれない。

 魁皇関のファンになったのは、やはり豪快な上手投げが素晴らしかったから。勝ちっぷりが本当に気持ちよかった。
 当時、母にも何人かご贔屓の力士がいて、魁皇関もその1人。魁皇関は、母と私の共通のアイドルだった。

 そのころ働いていた会社で、出入りの会社の方が、相撲の升席の招待券をくださった。「4人で行ってきたら」と、そのときのボスは私たち部下にチケットを譲ってくれた。一度は本物を見てみたい、と思っていた私は大喜び。
 同僚の1人のお母様が物知りな方で、国技館の係りの人には心づけを渡すのがよい、とアドバイスをしてくださったので、席に案内された後、手渡してみると、係りの人のサービスが一変。やきとりやらお弁当やらのほかにも、相撲の柄のカップ&ソーサーとかご飯茶碗とかの大盤振る舞いとなった。確か1人あたり1000円ぐらい包んだだけだったが、こんなにサービスがよくなるなんて、得しちゃったねー、なんてみんなで浮かれた記憶がある。
 が、肝心の相撲の結果は、申し訳ないことに全く覚えていない。覚えているのは、たくさんのおみやげをもらったことと、升席は意外に狭く、4人で座るにはちょっと窮屈だったことだけだ。笑

 しばらくして、また、相撲の招待券をいただいた。
 最初は物見遊山で喜んででかけた同僚たちも、(相撲は6時までなので)半休をとらなければ見られないせいもあってか、今度は行きたがらない。結局、私と、新しく転属になった同僚の2人で見に行くことになったのだが、当日になって、一緒に行くはずだった同僚が行けなくなったと言う。え、ウソでしょ? 私1人で行けっていうの? 升席にポツンと1人、座っている自分を思い浮かべてみた。
 そこで、思いついたのは、かなりの相撲好きの私の父母である。仕事絡みでいただいたチケットだが、1人で行くのはあまりにもったいない。新しいボスに、父母を連れて行きたいのだが、と正直に切り出すと、「おおっぴらにせずに、こっそりと行ってください」、と許可がおりた。
 急いで家に電話した。父が出て、母はでかけていると言う。「でも、昼ごろには帰ってくるはずだから、行くよ」。
 こんなわけで、にわかに家族で相撲を見に行くことになった次第。
 そのときの勝敗も、なぜだろう、全く覚えていない。笑
 が、たぶん帰るときだったか、国技館の外で、魁皇関にでくわしたことはクリアに覚えている。
 みんなが魁皇関に触れるのに乗じて、母も手を出し、「握手してもらった」と大はしゃぎだった。
 
 そして、20年近くの年月が流れた。先週末の伯父の新盆で親戚が集い、魁皇関が通産1047勝をあげた話が出たとき、母が自慢げに言った。「本当によかったわよねー。ねぇ、私、魁皇ちゃんと握手したことあるのよ~」。(うちの母は、何でも「ちゃん」づけで呼ぶのだ。笑)
 
 今回の魁皇関の新記録達成と引退で、記憶の隅に追いやられていた国技館の外での1コマが、鮮やかに蘇った。
 私たち家族は、魁皇関に、色あせることのない,素敵な思い出をもらったのだ。